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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2010.5 会報171:高校3年間授業デザイン

2010年5月春の1日研修会(会報171)2010年5月15日 大倉山記念館  参加者:38名
●実践報告(高校):「高校3年間を見通した英語授業のデザイン」
         萩原一郎さん(神奈川県立城郷(しろさと)高校)
 神奈川支部事務局長でもあり、新英研の改革を視座に入れ、さまざまな研究会で活躍されている萩原先生。生来の抜群の「バランス感覚」を活かし、4技能を配置し、「オーラルイントロダクション」を取り入れた時宜にかなった授業構成です。多くの参加者が「明日の教室で使える!」と思われたことでしょう。
会報担当より:萩原先生の発表はもっと多くの提言がありましたが、編集時間が足りず、全部を網羅できておりません。ご了承ください。

(1)萩原先生
・ 英語教師歴:新羽高校(英語通信と自己表現活動に重点を置く)
→港北高校(多読指導[3年間でサイドリーダーを7冊]、エッセイ・ライティング[卒業時に全員が3パラグラフ書ける]、 文化祭で英語劇[英語の選択授業])
→白山高校(積み上げることが難しいので、1つずつ「分かった」という気持ちを大切にする授業)
→岡津高校[現在は横浜緑園総合高校](英語1で終わる生徒が3分の1いるため、高1の終了時での目標しか立てられない。90分授業だったため、この頃のリズムが残っていて今でも萩原先生は45分経過すると調子が出てくるそうです)
→城郷高校(1~2年生は2クラス3展開の習熟度。教員生活初めての共通進度・共通テスト=自分でやりたいことがあったら、同僚に賛同を求めなくてはならない)
・ 城郷高校のカリキュラム:
1年=英語I(4)+オーラルI(1)
2年=英語II(3)+オーラルI(1)、選択:ライティング(3)
3年=リーディング(3)、選択:基礎英語(2)、応用英語(2)、実用英語(2)

(2)英語授業のデザイン
・ 新年度に向けての準備:勤務校の英語教育の問題点の洗い出し+改善点を提起
→can-do listを作成(読む、話す、書く、語彙、文法、発音の項目立て。「500語程度のやさしい英文を一気に読み、概要をとらえる」「与えられたテーマに関して、5文程度のまとまた英文を書く」「発表語彙として1000語、認識語彙として2000語習得する」など。)
→3年間のプランを作成 →今年度の英語Iの授業プラン
→3月に担当者間での話し合い(春休みに3人で3回、4人で2時間半。同僚のAさんからの提案「英語通信の定期発行」「文法事項とオーラルをリンクしたコミュニカティブ・タスクを導入」「2クラス合同で音読、暗唱、スピーチを学期に1回」「語彙習得コンテスト学年で年1回実施」)+合意事項を確認(授業で辞書引き 三省堂の『ビーコン英和』、音読重視、授業をお互いで見合う、教科書以外のリーディング[中学教科書を利用]とライティングの導入)
→はじめてのplacement test(クラス分け)を実施+分析(設問ごとの通過率を集計:Where are my dogs? I can’t find ( them ). 4択で正解は52%、 (Does) your father (like) cooking? Yes, he is a good cook.筆記で37%.run-ran-run 動詞の活用筆記で46%)
→1学期中間テスト後に担当者で反省
例)担当者の進度がバラバラ、post-reading活動(特にspeaking, writing)をやる時間がない、「教科書を使ったwriting」と「自己表現活動」の違いが不明確、副教材の『Training 英文法教室』(桐原書店)をどう授業に取り入れるか、英語IとオーラルIの時間割調整と差異化が難しい
・ 萩原先生の提案:
1)中高連携を考える:高校の先生方は中学教科書を読んでいますか? 中学で学ぶ文法事項が頭に入っていますか?(関係代名詞のwhoseは)理解の範囲」にとどめることになっているので、今の中学生はほとんど運用できない)
2)教科書分析:英語Iのみならず、英語IIやリーディングも一緒に。年間の授業でやることを縦軸にして、教科書を分析し尽くす。「フォニックスのルール」「教科書に現れる不規則動詞」「練習問題」「文法事項」「各課の後にあるコミュニケーション活動、ライティング」など。

(3)英語IIの授業デザイン
・ 英語IIの代表的な授業手順
1)単語シートを使ったペアワーク
1 単語を読む 2 日本語→英語を言う 3 日本語→英語を言う 
4 日本語→英語を書く(できれば授業でやり、あとは自学ノートで)
チャンクを意識・単語のアクセント・発音・派生語・接辞
2)oral introduction, jumbled sentences, brainstorming, あるいは、導入せずにいきなり教科書を読ませる
3)読解1回目:英語の質問を2つほど用意して、答えを見つけるために読ませる。
4)読解2回目(=重要な作業!):paraphrase reading、代名詞が指すもの・言い換え表現などを授業ノートに書き込ませる。
5)説明:主に文法事項。授業ノートに写させる。
6)音読:chorus reading, pair reading, overlapping, read and look up, individual readingなど。昨年度はここまで。今年度は以下を追求する。
7)story reproduction
8)writing
・ 参考1:安木真一(2010)『英語力がぐんぐん身につく! 驚異の音読指導法54』(明治図書)、
・ 参考2:ジャパンライム株式会社のDVD『英語教師の玉手箱3』(2009)の萩原一郎「基礎力の定着をはかる授業のすすめ方」で50分の模擬授業と自己表現活動の指導法を紹介。

(4)質疑応答
・ Q: 単語シートは「日本語が左、英語が右」というのがあるが、どうでしょう?
A: 自分は「左が英語、右が日本語」にしているが、使いようなのかなと思う。「自学ノート」で書く練習もさせている。
・ Q: オーラルイントロダクションの時間はどのくらい? 何か黒板に貼りますか?
A:時間は5~10分。教科書付属のCD-Romやネットの画像検索をしてイラストや写真を入手して黒板に貼る。また、本文のキーワードを板書します。
・ Q: 予習と復習は?
A:予習はなし。「授業ノート」は左に英文を一行おきに書く(コピー可能)。代名詞theyなどが何を指すかを書き込ませる。音読は20回。「自学ノート」(スタンプを押して点検)に日英対訳を書く(プリントで配布)。
・ Q: can doリストが良いと思う。can doリストで1人1人に支援しているか?
A:can doリストは授業の目安として用いている。生徒には出していない。
・ Q: 私の学校では高1を5人で担当している。中には文法をやりたくないという人がいる。打ち合わせする時のヒントを教えて欲しい。
A:英語教育で難しいのは「同僚」問題だと言われている。自分のやりたいことを示して、巻き込んでいく。例えば、共通テストの場合に「総合問題はやめよう」(総合問題とは長文問題の中に穴埋め・並べ替え・和訳などを盛り込む出題形式のこと。和訳なら和訳だけ、穴埋めなら穴埋めだけ、のように一つの形式で問うことを基本としたい)「英作文の問題を出そう」など、伝える。
・ Q: 理解度はどうか?
A:和訳の先渡しはしていない。後に渡している。「代表的な授業手順」の「読解(2回目)」でparaphrase reading、代名詞が指すもの・言い換え表現などを授業ノートに書き込ませるという作業が重要。paraphrase readingや代名詞を丁寧にやっている。ここは避けられない! 進学校ではスポンと抜け落ちてしまうようだが、中レベル以下では必要。
・ Q: p. 13の発音のしおりは?
A: aiueoの読み方。aは3通り。弱母音も大切。カード式にしている。
・ Q: p. 10の「Training 英文法教室」(桐原書店)は?
A:提出させて、出さない生徒は残してやらせた。授業では1番目の問いだけやって、答えを配る。

■参加者の感想
? 3年間なんてもちろん1年間でさえ、もしかして新学期の中間テストまででさえ、きちんと計画を立てられずに、「予定は未定」で一人でやってます。横のつながりのまったくない学年なので。今からでも最後の12月の授業に向かっていく道筋をきちんと考えて形にしたいと思いました。Readingの授業の手順(例えば過去問を教材にした)のideaをもっと教えていただきたいです。
? 発音のフォニックスカードとても分かりやすいです。早速自分も作ってみます。中学からのつながりをもっと意識をしていかなければと思いました。
? 少し前に学校の方へ授業見学させていただいたこともあり、実際のクラスでの生徒のようす等イメージしながら話を聞くことができた。実際に授業で実践したいことや授業のヒントが多く見つけられました。ありがとうございました。
? Can doリストなど、計画、カリキュラムを立てる上で大きな参考になります。もっと明確なヴィジョンを持たなければと大いに反省しました。ありがとうございました。
? これまでは自分が担当する科目の1年間のことしか考えていませんでした。1年目だけでなく、2年目、3年目を視野に入れた授業立案を考えて行きたいと思います。
? たくさんの知識が盛り込まれた冊子をじっくり自宅で読み返してみようと思います。とても勉強になります。なにごとも計画、準備が大切なのだと実感しました。
? 生徒に対する暖かい目線が強く感じられ、私も見習わなければと反省させられることしきりでした。
? Can doリストは早速作ってみようと思います
? 高校の授業の難しさ(同僚との打ち合わせ、流れなど)がわかりました。転勤した時の自分の考え方を同僚に伝えること。これは中学校でも同じで、私は週の最後の金曜日に調整します
? 学力・学習意欲の低い生徒たちをいかに指導していくのかについて元気をもらいました。今後の学年の英語教育に生かしていきたいです。
? わかり易く具体的な方法で英語の授業の組み立て方やワークシートの作成について、生徒への働きかけの行い方を教えていただいて、明日からの授業に活かせそうなことがたくさんありました。やはり「やる!」と決めたことを継続して周囲に働きかけを行うこと、生徒にもGOALをはっきり示すことは大切だと思いました。本日は本当にありがとうございました。
? 本日の3つの報告講演の中で一番良かったです。さすがだと思いました。1つ1つの経験に対しまじめに取り組み、問題意識を持ち、次のステップにつなげていく姿勢には今さらながら感心させられました。いろんな取り組みを参考にさせてもらいたいと思います。
? いつも先生のレポートを楽しみにしていました。同じ県立高校の先生として、毎日忙しい業務の中で、これだけ充実した授業をされていることに、本当に頭が下がります。今日の先生のお話を聞いて、また来週からがんばれるような気がします。ありがとうございました。
? 4月に異動した高校は、4月の初めまでに年間のシラバスが出来ておらず、数日後に授業開始という段になって初めて大ざっぱな流れが決まるという有様です。同僚問題を解決し、徐々にチーム仲間を作っていく必要があると思いました。
? 高校・中学との線を引くのではなく、つなげていく所に親しさを覚えました。
? 申し訳ありません。都合で参加できませんでした。
? 同僚とのチームワークですばらしいすべり出しですね。来年こそは担任となって指導力を発揮してください。
? 途中からの参加でしたが、とても参考になりました。
・ 中学校での使用教科書を調べておく
・ これから使われる(高校で使用する教科書の)不規則動詞をピックアップする。
・ 3年間を考えて授業をするなど…、ありがとうございました。
? 同僚の先生と協力体制を作りあげて、学校ぐるみで取り組んでいる萩原先生の報告。また勉強になりました。システマティックで整理されている報告についても刺激を受けます。何より具体的手立てがわかりやすく、中学でも大いに参考になるのがあります。
? 資料7ページにある代表的な授業手順を参考に英Iリーデイング授業を見直していきたいと思いました。
? 初めて萩原先生の報告を拝聴しました。とてもキメが細かい(準備周到、生徒の実態をしっかり把握)と思いました。中学の教員でも、なかなかここまで生徒に対してできていません。特に中学の教科書まで読み込まれているのは驚きました。
? やはり「全体を見渡す」って大事ですね。予定通りに行くことはまずない私ですが、盛り上げる部分や生徒の負荷など、季節行事に合わせてバランスよく配置したいと思いました。


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